メンタルヘルスの定義
10.29
メンタルヘルスとは、「精神保健:mental health」と訳され、健康のうち主として、精神面の健康を対象とし、精神障害を予防・治療し、また精神的健康を保持・向上させるための諸活動をいうと多くの教科書に掲載されています。従来の精神衛生が精神障害などの狭義的な意味を有していたのに比べて、比較的に広義的に解釈できます。
WHOの憲章の前文では「完全な肉体的(physical)、精神的(mental)、Spiritual及びwell-being のDynamicな状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」と、健康の概念を、ただ単に病気や虚弱がないという除外的、消極的な意味にとどめず、身体的、精神的にはもちろんのこと社会的にも完全に良好な状態だと唱っている(4)。
しかし、メンタルヘルスを考えるときに、「完全に良好な状態」という定義を少し柔軟に提えた方が理解しやすい。たとえば、体の病気や身体機能の欠陥があっても、精神的にはまったく健全で創造的な活動に従事している人びとがいる。また逆に、客観的には自由で満たされているようにみえても、その自由が不安の源泉となって神経症に陥っている事例もよく目にする。つまり、困難や悩み、迷い、あるいは不自由というものが「ない」ということが、かならずしも健康の必須条件ではない。
われわれの多くは、「完全に良好な状態」と「不健康」(病的状態)との中間に位置する「半健康」の状態に生きているのである。したがって、ストレス状況ゆえに、そのゾーンからスリップダウンすれば病気となるし、他方、困難や苦悩があっても、それをよく理解し、受容でき、さらに解決しようとする力が働いている状態は健康的といえる。従来の医学は、不健康ゾーンの解明と半健康へむけての治療方法の研究が主体であったが、今後は半健康を害する要因の研究(予防医学)がもっと必要である。さらに半健康ゾーンから、完全な良好状態ゾーンに移動できるような日常的なアプローチが必要とされている