エリクソンのライフサイクル
12.19
エリクソンの発達段階
1ライフサイクル
ライフサイクルの概念は、①生物学では生活環、②家族社会学では、家族の形態の変化が成員にも影響を及ぼす
観点、などがあり、ものごとのはじまりから終わりまでの全体像の中で、個々の段階がどのように位置づけられるかを
考えるうえで役立つ。
2エリクソンの発達段階
エリクソンは、フロイトの心理性的理論をもとにして心理・社会的発達を考えた。フロイトと同様に幼年期の重要性を
認めながらも生涯にわたってパーソナリティの発達が続くという視点を導入し、発達の概念が生涯発達へと拡張され
た。
そこではエリクソンは、人間の誕生から死にいたる人生のライフサイクルの八つの諸段階を考えた。
3 八つの発達段階
①信頼対不信:乳児期
乳児期は誕生により初めて外界と接触する時期であり、母親の愛情ある適切な接し方により、自分自身と自分をとり
まく社会が信頼できるものであることを知る。ここでは、人間として最も基本的な態度を育てる事になる。もしこの時期
に信頼感を確立する事が出来なければ、その後の周囲からの働きかけも効果を失ってくる。生後8ヶ月頃になると「人
見知り」や母親との「分離不安」がみられるが、これは母親との愛着や信頼関係が成立した証拠とみることができる。
②自律対疑惑:幼児前期
1歳前後では、歩きや意味のある発語が始まり、3歳頃までの時期においては、信頼感の確立に伴い、子どもは自分
自身で物事をする事を主張し始める。排泄のしつけが行われる時期でもあり、この時期の課題は自律心である。この
自律心の発達が妨げられる場合には、自己の価値に対する疑惑や挫折感・羞恥心が生じてくるようになる。
③自発性対罪悪感:幼児後期
5歳頃までの時期は、歩行が完成され、自由に遊びまわる事が出来るようになり、また想像力も活発になる。五感や
情緒の発達はあるが、大人と違いものの見方はまだ感情や欲求に左右されやすい。この時期に、自発性が育まれる
事になるが、逆にそうした経験が拘束されたり、禁止されたりすると、精神が萎縮し、強い罪悪感を持つようになる。愛
情関係の不成立や幼児期の社会性が未発達であると、対人関係に問題をもつ大人になりやすい傾向がある。
④勤勉対劣等感:児童期
6、7歳頃からは、興味や関心の目を外界に向け、学習意欲は旺盛となり個性もはっきりしてくる。
9歳頃には仲間意識が芽生え、ギャングエイジが見られたりする。しかし近年、塾通いやTVゲームの普及により、ギャ
ングエイジを経験することなく育つ子ども達が多い。これは社会への適応に必要な役割・責任・協力などの欠如を生む
可能性もある。ここでは、知的作業に全力を持って立ち向かう事が出来なかったり、自分が上手に物事をこなせないと
いう事を強く経験する機会が多いと、自己についての劣等感が生じ、物事をつくり出すという喜びが獲得されないままに
なってしまう。
⑤同一性対役割の混乱:青年期
個人は出生以来、父母・家族等その段階ごとに意味のある対人関係の中で同一化を重ねる事により自我発達を遂
げていく。
青年期に入り、体の各部分の成長がアンバランスと同様に心も揺れ動く。自分が男または女であることを受け入れね
ばならず、「自分とはなにか・どうあるべきか」を模索する。親や友人とも異なる自我の同一性の確立と受容が青年期
の発達課題である。この頃、男子が退行的となることや母親に反抗的になるのは、母親を依存対象としてみているから
である。つまり現実を受け入れていないのである。
青年が確実な自分、自己定義を見出すに到るまでには、様々な役割や価値を思考錯誤的に取捨選択する時間的余
裕がなければならない。何の責任をも伴わずそのような可能性を自由に試す事が出来る時間、エリクソンはそれを心
理・社会的猶予期間(モラトリアム)と呼んだ。この時期に上手く自己を乗り越えられれば、真の自分、自我同一性が獲
得できるが、危機を上手く乗り越えられない時には自我同一性の拡散・混乱の状態が生じる。
⑥親密感対孤独感:成人前期
就業・恋愛・結婚をするこの時期は、自我同一性の確立をもとに現実生活の中で生活していくこととなる時期である。
自我同一性の確立を成し得た男女が夫婦として家庭を営む事になり、ここで求められるのが親密性である。親密性
とは「他人の欲するものや関心を自分のものと同様に感じ取れる能力」であり、「不安なしに自分の持っているものを他
人に分け与えることができる能力」である。親密性の獲得過程の中で自我同一性はさらに確固としたものになるが、そ
うでなければ、異性を支配するか呑み込むか、逆に服従し自分が消えてしまう事になり、それを防衛しようとすると孤立
感を伴うことになる。
⑦生殖性対自己本位:成人後期
成人前期で、親密性を確立できた夫婦は、次に子供を生み育てることになる。生殖性とはまさに子孫をつくり、次の世
代の確立と指導に対する興味・関心によって表される。成人後期になると、社会で中心的存在となり、与える事そのも
のに満足感を体験していく事になる。生殖性の欠如は停滞の感覚の浸透と人間関係の貧窮化を招く事になる。もはや
関心の的は次の世代ではなくひいては他人でもなく、自分の満足が中心を占める。
⑧完全性対絶望:老年期
老年期は、別れと喪失の時期である。青年期までの別れは独立と自立を促すが、50代半ばにもなると、子どもは親を
離れ、体力も衰え、退職によって社会からの孤立を感じ、経済的基盤も失ってしまう。ここでは、絶望的に捉えず自我
を統合し、自分の生きた証を示すことを課題とする。